小麦の乾燥方法について
8月24日小麦の乾燥が終了。
今日は、その乾燥の方法についての話。
上の写真は、乾燥機から出す時に1回目のトーミ選別機に通しているところ。
チョット、ピンボケだけども、操作補助はmanapon。
パンも焼きますが、こんなこともやってます。
~小麦の乾燥方法についての話~
ウチでは、小麦の乾燥を最終段階の水分調整にのみ、穀物用乾燥機の温風を利用している。
小麦を育て始めた当初は、収穫後も粒の充実が続く天日乾燥を行っていたのだが、1ha以上の栽培になってからは、穀物用乾燥機を使うようになった。
小麦の収穫時期は、小麦農家なら誰もが、天気の状態を大いに気にしていて、そこにはピリピリしたムードが漂っている。
収穫前の小麦は、雨を特に嫌う。
多量な降雨による小麦の濡れは、蒸れを伴うと、畑に生えている状態で発芽する。これを「穂発芽」という。穂発芽した小麦は、出荷段階での評価が格段に下がってしまう。商品価値が無くなってしまうと言えるかもしれない。丹精込めて育てきた小麦が、収穫時期のタイミングひとつでこれまでの努力が水の泡になるのだ。
こんな理由から、ピリピリしたムードが漂うわけだ。
ウチはパン屋でもあるので、小麦の穂発芽は、こんな感じでとらえることになる。
穂発芽した小麦は、灰分の上昇を伴う。灰分の高さは、ミネラル分の高い言えば”旨み”のある小麦粉となるのだが、高すぎると”えぐ味”を伴うものになる。
何より困るのは、製パンの工程で粉に水分を含ませた時に”のり”っぽくなることだ。
生地の扱いも悪く、出来上がるパンの性格も変わってしまう。
そんなことも考えると、やはり穂発芽は避けなければならない。
北海道の大規模な小麦農家からしてみれば、ウチの作付面積は、多い年でも2ha程度と非常に小さい。ウチの近隣の農家の方々と比べれば、10分の1以下の作付面積だ。
しかしながら、1haを超える作付は、やってみると決して小さいものでも無く、全量を天日乾燥にすることは容易とは言えない。
年配の農家さんに聞くと、昔は皆天日乾燥だった、とのことなのだが、その時代は、まだ今より地域住民も多く、地域全体家族総出で行っていたとのこと。
自身の経験をも照らし合わせると、今の作付分のすべてを脱穀して回る労力的余裕は無いと言える。もし天日乾燥の間の天候が晴れ続きで、上手く乾燥が出来たとしても、その後脱穀に要する期間中も降雨が無いとは言えず、そんなことも考えると、天日乾燥自体で得るものは、何だか”カケ”に出て勝たなければならないというような感じにも思える。
せっかく無事収穫を終えたものを”カケ”るわけには行かない。
こんな思いで、日頃あまり妥協することは無いのだが、こと天日乾燥においては妥協することになった。
しかし、それと同時に、機械力を得ての乾燥でも、何とか天日乾燥に近づけることは出来ないものだろうか、と考えたのは言うまでも無い。
そんなことを、今のような作付面積になった4回目の小麦の作付を始める前に考えていた。今から5年前のことだ。
年々、少しずつ乾燥方法には改良を加えている。
今の方法は、大まかにはこんな感じだ。
小麦の収穫は、粒の水分が極力低くなった熟した状態で刈り取っている。
雨があたることを恐れての早刈りはしない。畑での投熟を待って収穫は、天日乾燥に近い粒の状況が得られるからだ。
しかし、収穫適期を見誤るとリスクは大きい。
小麦の出穂日からの積算温度を毎日記録し、例年の積算温度の推移と見比べながら当年8月中旬以降の収穫適期を推定する。推定した収穫適期が近づけば、週間天気予報の気温予想を参考に、収穫適期を絞り込んでいく。
日々、穂の状態での粒水分状況のチェックを行うことも忘れない。
しかし、収穫開始までの完全な投熟を目指すことは出来ない。
零細規模なウチには、大型コンバインというものは無く、やはり収穫にはある程度の日数がかかってしまう。その収穫期間中の降雨も想定しなければならない。
早刈りは避けたうえで完熟と同時に収穫を終わらせる、というのが現段階での最良の方法と思い、実行している。
そんな方法で、今年も穂発芽することなく、収穫を無事終えることが出来た。
ここからは、最終乾燥だ。
収穫した小麦粒は、穀物乾燥機に入れ、通風循環により蒸れさせないことに努める。
ここでの水分は、15%を目標にしている。15%まで水分が下がれば、乾いたも同然の状態。石臼ですぐに挽くなら最適の水分状態だ。
しかし、年間の保管状況のことを考慮し、最終水分を12.5%まで下げている。
この最後の段階で、穀物乾燥機の温風を利用し、粒を仕上げている。
これが、現状での最良の方法。
美味しいパンを焼くためには、いろいろ考えるところがある。
来年は、新しい方法を試みているかもしれない。
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この方法は、規模があまり大きすぎない、また小さすぎない畑であるウチの方法で、どんな場合でも上手く行く方法ではありません。
量が多いと、通風循環中に蒸れを起こす可能性もあるため、さらなる畑での投熟を目指す必要があります。
状況状況で最善の方法を見つけたいものです。
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